霊長類研究 Supplement
第23回日本霊長類学会大会
セッションID: P-30
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ポスター発表
人工保育のアジルテナガザルにおけるテナガザル各種の写真に対する好み
*田中 正之打越 万喜子
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抄録
 本研究では、人工保育のアジルテナガザル1個体を対象として、テナガザル科の各種の写真に対する選好性を調べた。田中・打越の2004年大会発表では、同じ個体を対象として霊長類各分類群の写真に対する視覚的好みを調べた。その結果、被験者はヒトの写真に対する反応率がもっとも高かった。この研究では、テナガザル科として複数の種が混在して提示されていた。本大会においては、テナガザル科の中で相対的にどの種に高い選好性を示すのかを調べ、発達や繰り返し提示の影響も検討した。被験者は京都大学霊長類研究所で飼育されているアジルテナガザル1個体(6歳~9歳の間に3回テスト)と、統制群としてチンパンジー9個体を用いた。テナガザルは生後直後より人工保育され、1歳より実の弟と同居し、3歳からは実の母親とも同居していた。刺激の提示と反応検出にはタッチパネル付きの17インチ液晶モニターを用いた。刺激はテナガザル科4属9種のカラーの画像ファイルを用いた。1種あたり15枚の写真を用いた。被験者が画面中に提示されたスタート刺激に触れると、6種のテナガザルの画像が提示された。1つの画像に触るたびに選択した種とは無関連にチャイムが鳴り、60~70%の確率で食物が与えられた。2つの画像に触ると、再びスタート刺激が提示された。提示される画像とその組み合わせは毎試行変えられた。9試行を1セッションとし、計12セッションおこなった。チンパンジー9個体の平均を見ると、シロテテナガザル(H. lar)の画像がもっとも選択率が高く、アジルテナガザル(H. agilis)は下から3番目の選択率だった。一方、アジルテナガザルでは初回テスト時はH. larよりもH. agilisの選択率が高かったが、テストを繰り返すにつれて、チンパンジーと同様の選択傾向を示すようになった。結果から、テナガザルの視覚的好みが後天的に形成されることが示唆された。
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© 2007 日本霊長類学会
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