霊長類研究 Supplement
第23回日本霊長類学会大会
セッションID: P-35
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ポスター発表
霊長類前頭前皮質における社会行動の自発的なカテゴライズ化
*綱田 丈二澤口 俊之
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抄録
 真猿類が社会認知(social cognition)を発達させていることは,Cheneyら(1986)の古典的な研究を含めた多数の生態学的研究によって示されてきたが,その脳内メカニズムはほとんど分かっていない。社会認知の中でも,社会行動の視覚的認知は視覚性動物としての真猿類にとって重要である。これまで、外側前頭前皮質のニューロンが、社会行動において不可欠な顔やvocalizationをコードすることが示されてきた。したがって、社会行動の視覚認知が外側前頭前皮質のニューロンによって再現されることはありそうなことである。この仮説にアプローチするために、ニホンザルの社会行動の動画とnon-socialな行動の動画をニホンザルが注視している間の外側前頭前皮質のニューロンの活動を調べた。社会行動としてはグルーミングとマウンティング、non-socialな行動としてはアイコンタクトやボディコンタクトしていない複数のサルの行動を用いた。動画は、4秒から8秒の長さだった。この行動課題では、サルは動画を記憶したり、弁別したりすることが要求されていないにも関わらず,記録したニューロンのうち約半分が、特定のタイプの社会行動の動画に対して有意な活動変化を示した。この社会行動選好的な活動変化は,動画の物理的性質(明るさ)、社会行動をしている個体、社会行動中の表情や体の小さな動きとは無関係であることを確認した。これらの結果は,外側前頭前皮質の多くのニューロンが社会行動の視覚情報を自発的にカテゴライズすることを示唆する。こうしたニューロンレベルでの社会行動に対する選好的かつ自発的なカテゴライズ化は,視覚性社会認知における重要な神経基盤になると考えられる。さらに,本研究結果と先行研究から,外側前頭前皮質が「社会認知領野」であるという仮説を提唱することができる。
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© 2007 日本霊長類学会
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