霊長類研究 Supplement
第24回日本霊長類学会大会
セッションID: A-10
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口頭発表
クモザル果実採食における視覚シグナルの重要性
*平松千尋 千尋河村 正二松本 圭史Amanda MELINFillipo AURELIColleen M. SCHAFFNERMisha VOROBYEV
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抄録
【目的】霊長類における3色型色覚の進化は一般に、緑の葉の背景から赤みがかった果実や若葉を識別するために進化したと考えられている。しかし、自然集団を対象として3色型色覚の優位性を行動観察により検証した例は少ない。新世界ザルは同一種内に2色型と3色型個体が混在するため3色型色覚の進化と行動との関連を研究する上で優れた観察系である。我々は、コスタリカ、サンタロサ国立公園に生息するチュウベイクモザル(Ateles geoffroyi)1群を対象とし、糞DNAからの赤-緑視物質遺伝子判定により各個体の色覚型を決定し、サルが果樹にいるときの果実採食行動を観察した。これまでに、2色型(n=13)と3色型(n=9)の果実採食効率に違いが見られなかったことを報告している。これは、比較的近距離からでは、輝度シグナルや嗅覚シグナルが有効であるからだと考えられる。今回、視覚シグナルのモデル化、および、嗅覚行動の解析を行い、それらの採食効率との相関を調べることにより、視覚シグナルの重要性を検証した。
【方法】果実と葉の反射率から3色型にのみ存在するred/greenコントラスト、および2色型にも存在するblue/yellow、輝度コントラストをモデル化し、果実採食効率との相関を調べた。また、果実選択における嗅覚使用頻度と果実採食効率との相関も調べた。
【結果と考察】全ての視覚コントラストで果実採食効率と正の相関が見られ、どの視覚シグナルも果実採食に重要であることが示唆された。さらなる重回帰分析により、輝度コントラストが2色型と3色型の両者において最も果実採食効率を説明することが明らかとなり、これが2色型と3色型に違いがないことに関連していると考えられた。また、嗅覚使用頻度と果実選択率には強い負の相関が見られ、視覚シグナルが有用でない場合には、嗅覚依存度が高くなることがわかった。
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© 2008 日本霊長類学会
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