霊長類研究 Supplement
第24回日本霊長類学会大会
セッションID: B-23
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口頭発表
カリンズ森林のチンパンジーの食物パッチ利用:scramble competition仮説はチンパンジーの遊動パターンを説明できるか?
*古市 剛史橋本 千絵
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抄録
ウガンダ共和国カリンズ森林のチンパンジーを対象に、ひとつの食物パッチと見立てた果実樹を、採食パーティがどのように使っているかを調べた。1本の果実樹で最初の個体が採食を始めてから最後の個体が立ち去るまでを1つの採食セッションとし、その間5分おきに樹木内でみられる個体の採食行動を記録した。
果実樹の樹冠面積、熟果の密度、熟果の総量といった果実樹側の変数と、利用個体数、採食セッションの長さ、総採食ユニット数、個体あたりの採食ユニット数、個体あたり時間あたりのユニット数といったチンパンジー側の変数との関係を分析したところ、個体あたり時間あたりのユニット数を除くほとんどの組み合わせに有意な相関関係がみられた。ところが、樹冠サイズや果実密度が異なる4種の主要食物(MusangaFicus spp.、PseudospondiasSyzigium)ごとに分析すると、食物の種類ごとに相関の見られる変数の組み合わせが異なった。このことは、チンパンジーはサイズや果実密度の異なる食物種を異なる使い方をしていることを示しており、食物パッチの利用パターンの分析の際に、異なる樹種に関するデータをプールして扱うことの危険性を示している。
もっとも主要な食物であるMusangaFicusについて、採食セッションの長さが何によって決まっているかを分析したところ、利用個体数が多ければ多いほど長くその木に滞在するという傾向が見られた。これは、利用個体数が多いほど早く食物資源を食べ尽くし、採食セッションの長さが短縮されて採食パッチ間の移動回数や一日の移動距離が増えるというscramble competitionによってチンパンジーの遊動パターンやその雌雄差を説明しようとする仮説に反するものだった。この結果から、チンパンジーの遊動パターンには、採食効率とは無関係な社会的要因も強く働いていることが示唆された。
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© 2008 日本霊長類学会
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