霊長類研究 Supplement
第24回日本霊長類学会大会
セッションID: C-01
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口頭発表
ニホンザルの母ザルはどのように子ザルの鳴き声に反応するのか?
*大西 賢治中道 正之
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抄録
【目的】子ザルは、過度に鳴くことによって保護や授乳をそれほど必要としない場面でもより多くの投資を引き出しているという仮説と、子ザルの鳴きは常に子ザルの状況を正しく伝えている「正直な信号」であるという仮説がある。どちらの仮説が支持されるのかを検討するために、本研究では、子ザルの鳴き声の種類ごとに、子ザルを見る行動や回収行動、授乳の許容等の母ザルの反応を分析した。
【方法】勝山ニホンザル集団において、2005,2006年に生まれた0歳齢の子ザルとその母ザル16組を対象として研究を行った。子ザルの7-8週齢から15-16週齢までを観察し、観察期間を2週齢ごとに5期間に分けた。1セッション20分間の連続観察を、子ザルの週齢区分ごとに2時間、各母子ペアにつき10時間行った。記録項目は子ザルの鳴き(gecking、scream)、母ザルの反応(子ザルを見る行動、回収行動、授乳の許容)であった。
【結果と考察】子ザルが危険を感じたときに発するscreamの頻度は、子ザルの7-8週齢から9-10週齢にかけて上昇し、11-12週齢で低下し、13-14週齢で上昇し、15-16週齢で低下した。一方、scream後に母ザルが子ザルを回収する率は、7-8週齢から11-12週齢にかけて上昇し、13-14週齢で低下し、15-16週齢で上昇し、子ザルが鳴く頻度と反対の変化を示した。この結果は、子ザルが母ザルの回収率に応じて鳴く頻度を変化させ、より多くの投資を引き出そうとしている可能性を示唆している。しかし、子ザルのscream後に母ザルが子ザルを見る率は、子ザルの週齢に関わらず一定の高い値を維持した。この結果は、「正直な信号」仮説を支持している。母ザルが鳴いた子ザルを回収するかどうかは、母ザルが子ザルの周囲の状況を見て決定している可能性がある。これが実証されれば、「正直な信号」仮説が支持される。
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© 2008 日本霊長類学会
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