霊長類研究 Supplement
第24回日本霊長類学会大会
セッションID: P-30
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ポスター発表
ワオキツネザルのオトナメスの優劣関係がワカモノの社会関係に及ぼす影響
*宮本 直美
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抄録
母系の社会構造を持つ種では、メス同士の社会関係は血縁関係に強い影響を受ける。ワオキツネザルでも、メスの社会関係において、血縁メス同士の親和性が強いことや、家系間に優劣関係があること、家系間の対立とその結果生じる群れの分裂など、メスの血縁関係がその社会構造に大きく影響を与えていることが調査報告より明らかにされてきた。本発表では、2003年4月~7月にかけて、マダガスカル南部ベレンティ保護区に生息する調査対象の2群で観察された異なる家系同士の対立関係が未成熟個体の社会関係に与える影響について分析・考察する。調査対象であるT2A群、T1群のそれぞれで異なる家系同士、血縁関係にあるメス同士の対立が観察された。それに伴って示された、未成熟個体のうち、性成熟に達する直前の2歳半の個体の社会関係の特徴を、親和的交渉と敵対的交渉に分けてその傾向を示した。親和的交渉において、メスは自分の家系との交渉に偏り、オスはメス全般と交渉を持った。敵対的交渉において、メスの場合は、対立する家系同士の敵対性が激しいほど非血縁のオトナメスとの交渉頻度が高かった。オスの場合は、オトナメスの血縁・非血縁で交渉頻度に偏りがなかった。また、メスは特定のオトナメスに対し優位を示したが、オスはすべてのオトナメスに対し劣位を示した。2歳半のメスの社会関係は家系間の対立に強く影響され、一方でオスはそれらに影響されない社会的位置づけにあることが示された。
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© 2008 日本霊長類学会
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