霊長類研究 Supplement
第25回日本霊長類学会大会
セッションID: P-44
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ポスター発表
ニホンザル乳児における影の運動からの物体の運動軌跡の知覚
*伊村 知子友永 雅己
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抄録
影の中でも特にキャストシャドウは,物体が光源を遮ることにより別の面に生じる影で,主に物体と面の相対的な空間配置を推測するための手がかりとして用いられる。成人では「光源は動かない(静止光源)」,「上から照らされる(上方照明)」という制約を設けることで,より効率よく影から物体の運動を推測する(Kersten, Mamassian, & Knill, 1997)。ヒトの乳児では6,7ヶ月で影の運動の違いから物体の運動軌跡を区別するという報告があるが(Imura et al., 2006),このような発達過程が種を超えて共通に見られるのか。そこで本研究では,京都大学霊長類研究所で生まれたニホンザル乳児を対象に,影からの物体の運動軌跡の知覚についてFamiliarization-Novelty選好注視法を用いて検討した。実験1では,影の運動軌跡により「接近-後退」運動するボールが知覚される映像を20秒間,4試行呈示した後,影の運動軌跡のみを変化させ,「上昇-下降」運動するボールが知覚される映像と「接近-後退」運動するボールが知覚される映像を各20秒呈示した。新奇な運動である「上昇-下降」運動に対して注視時間の増加が見られるかにより弁別能力を検討した。その結果,ニホンザル乳児は「上昇-下降」運動の方を「接近-後退」運動に比べ長く注視した。実験2では「上方照明」の制約を検討するため,実験1で用いた映像のボールの上に影が呈示されるよう,位置のみを逆転させた。その結果,テスト試行の「上昇-下降」運動と「接近-後退」運動の注視時間に有意差は見られなかった。以上の結果から,ニホンザルの乳児はヒトと同様の「制約」をもとに影の運動から物体の運動軌跡の差異を弁別できることが示された。また,影による物体の運動軌跡の知覚はヒトとニホンザルで共通の能力であり,生後まもなく発達する可能性が示唆された。
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© 2009 日本霊長類学会
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