霊長類研究 Supplement
第25回日本霊長類学会大会
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公開シンポジウム
『母親』~霊長類学と子ども学のクロスディスカッション~
*竹ノ下 祐二
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p. 4

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抄録
現在,「母親」が揺らいでいます。生活様式の急激な変化や多様化により,母親たちが自らの「あるべき姿」を見出すことが困難になっています。他方,さまざまな「あるべき姿」が提示される中,その「あるべき姿」になれず悩む母親も増加しています。そのため,母親の育児をめぐる悩みは深刻化し,それが時には育児放棄や虐待,子殺し等の問題として顕在化しています。現代の母親はどうあるべきなのでしょうか。さまざまな分野の研究者,実践者たちが,議論していますが,なかなか答えは見えてきません。
日本の霊長類学は,ヒトを含めた霊長類の研究を通じ,人類社会の進化,人間の本性を解明することをその目的の一つとしてきました。母親の行動・社会関係・心理・母子間相互作用といった問題に関しても,フィールドワークに基づく野外研究,実験室での心理学的研究,生殖生理といった諸領域からの多くの研究の蓄積があります。
「子ども学」は,「子ども」およびその周辺領域に関する,総合的な新学問分野です。それは,発達心理学,保育学,小児科学,教育学といった,既存の学問分野の枠組みを超え,子どもという存在を総合的に捉え,「子ども理解」を基本に,発達障害や子育て支援といった現代的問題にもとりくむ領域です。
そこで本シンポジウムでは,まず霊長類学の立場から,ヒトの母親をめぐる議論にあらたな論点を提示しようと思います。次いで,そうした論点をどのように発展させてゆくことができるか,子ども学の立場から検討します。ふたつの学問領域をクロスさせた討論を通じ,現代の母親問題を解きほぐす糸口を探りたいと考えています。

霊長類学からの話題提供
チンパンジーの母子の参与観察から見えてくる「母親」
明和政子(京都大学大学院教育学研究科)
母になること,母でいること ―ニホンザルとヒトの母子関係比較―
広谷浩子(神奈川県立生命の星・地球博物館)
「母親」を育てる ~母性を引き出すきっかけづくり~
不破紅樹(林原生物化学研究所類人猿研究センター)
だれもが「母親」:アフリカ焼畑農耕民社会の「母親」のすがた
杉山祐子(弘前大学人文学部)
子ども学からのコメント
林陽子(中部学院大学子ども学部)
別府悦子(中部学院大学子ども学部)
オーガナイザー
竹ノ下祐二(中部学院大学子ども学部)
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© 2009 日本霊長類学会
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