抄録
これまで多くの研究者が霊長類個体群を対象にして個体群動態を研究してきたが,長期資料に基づいた食物量と個体群動態との関係については情報がまだ少ない。我々は大分県大分市の高崎山に生息する餌付けニホンザル個体群を対象に,50年以上にわたって蓄積した資料を元に,給餌量削減に伴う個体群パラメータの変化を検証した。
高崎山では,1950-1960年代の大量給餌により個体数が直線的に増加した。そのため,1965年から給餌量の削減が開始された。我々は,給餌量削減に伴う,1970-1990年代における個体群パラメータ(成熟雌の体格指数,初産年齢,出産率,幼児死亡率,個体数密度,年間個体群成長率)の変化を調べた。
その結果,成熟雌の体格指数の低下,初産年齢の上昇,出産率の低下,幼児死亡率の上昇が認められ,それらの結果として年間個体群成長率は大きく低下した。本研究は,長期資料に基づいて,給餌量と個体群パラメータの間の関係を定量的に分析した最初の研究である。