霊長類研究 Supplement
第25回日本霊長類学会大会
セッションID: B-7-2
会議情報
口頭発表
マダガスカル,ベレンティ保護区におけるワオキツネザルの個体群動態:20年間の記録
*市野 進一郎相馬 貴代宮本 直美佐藤 宏樹小山 直樹高畑 由起夫
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
(目的)霊長類の個体群動態は,環境要因のみならず,その種の生活史特性や社会構造と密接に関連している。本研究では,個体識別にもとづく長期継続調査が20年間にわたっておこなわれているワオキツネザル個体群の動態を報告し,その特徴を明らかにする。ワオキツネザルは昼行性原猿で,15頭程度の複雄複雌群を形成している。
(方法)調査地はマダガスカル共和国南部ベレンティ保護区である。保護区内に設置した14.2 haの主調査地域に生息する複数の群れが調査個体群である。1989年に個体識別にもとづく継続調査が開始され,現在まで調査が続けられている。
(結果と考察)主調査地域に生息するワオキツネザルの個体数は,1989年から多少の増減がありつつも増加傾向にあった。しかし,2007年から2008年にかけて大幅に個体数が減少した。個体数の減少は大きなサイズの群れで顕著で,2008年の平均群れサイズは9.9頭(範囲:4-13頭,n=7)であった。また,2007年に生まれた幼児の死亡率は80.8% (n=26)と過去20年間で最も高かった。
この値は,主調査地域における1989年から1999年までの平均幼児死亡率37.7%[Koyama et al. 2001]やマダガスカル西部のべザ・マハファリ特別保護区で報告された死亡率52%[Sussman, 1991]よりもかなり高く,べザ・マハファリ特別保護区で報告された旱魃の年の幼児死亡率80.0% [Gould et al. 1999]に匹敵した。また,2007-2008年にはメスよりもオスの消失率が高く,個体群の社会的性比に偏りがみられた。
今回の結果は,霊長類の中では比較的短い世代時間,高い出産率と高い死亡率という生活史特性を持つワオキツネザル個体群では,個体数や性年齢構成の急激な変化が起こりうることを示している。
著者関連情報
© 2009 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top