抄録
霊長類種9種11個体,ヒト(Homo sapiens),チンパンジー(Pan troglodytes),テナガザル(Hylobates spp.),ヒヒ(Papio hamadryas),ルトン(Trachypithecus francoisi),サバンナモンキー(Chlorocebus aethiops),マカク(Macaca spp.),オマキザル(Cebus albifrons),リスザル(Saimiri sciureus)を対象に,上腕および前腕の筋において,筋重量,筋線維長および生理的筋断面積(PCSA)について調査・比較した。筋重量については,上腕,前腕および指の筋ごとに3つそれぞれの総筋重量をもとめ,各部位における機能的解釈に基づいた分類でのパーセンテージを求めた。また,サイズの影響をなくすため上肢における総筋重量を用いて筋重量,筋線維長,PCSAを標準化し,それぞれの機能的カテゴライズにおいて種間比較を行った。
結果:チンパンジーとテナガザルは,前腕の回内・回外運動を担う筋において異なる割合を示し,それは主な行動様式の違いに起因することが,筋電図を用いた先行研究との比較・考察から示唆された。つまり,チンパンジーはナックルウォーキング,テナガザルはブラキエーションであり,異なる行動様式が回内筋もしくは回外筋の運動量の違いを生み,相対重量の差異を生んでいるのかもしれない。さらに,類人猿以外のサルは類人猿よりも相対的に肘の伸筋が大きいが,これは,類人猿以外のサルは四足歩行が主であることと関連している可能性がある。