霊長類研究 Supplement
第25回日本霊長類学会大会
セッションID: P-15
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ポスター発表
チンパンジーのオス-メス間の順位争い時に見られた第三者個体への利益供与
*福永 恭啓
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抄録
大阪市天王寺動物園で飼育されている4頭のチンパンジー間(オトナメス・オトナオス・オトナメス・子ども)では,長年メスのアップル(1981年多摩動物公園生)が最優位だったが,オスのレックス(1992年シンガポール動物園生)が成長するにつれ,06年9月ごろから両者が争い始めた。天王寺動物園では昼間に一回,餌を展示場にばらまいており,優劣関係が餌の獲得量に反映する。最初は餌をとれなかったレックスであるが,現在はアップルと同じくらい確保している。一方,若いメスのミツコ(1988年生三和化学研究所,92年に移入)は,アップルの最優位にあった当時はアップルに攻撃され餌をとることが出来なかったが,その獲得量も増加している。レックスの成長とミツコの餌の獲得量の増加が関係している可能性が考えられたのでデータを分析した。
天王寺動物園において2006年2月から2009年4月まで給餌の際に各個体が餌をとった場所と数の記録から,各個体の餌の獲得割合および獲得場所の位置関係を調べた。また,瞬間サンプリング法(5分間隔)による行動記録の中からミツコと他個体とのグルーミングの頻度とパタンを調べた。
ミツコの食物獲得割合は07年後半から徐々に増加していた。ミツコはレックスの近く,かつ,アップルと反対側で採食しており,レックスもミツコを攻撃していない。ミツコとレックスがグルーミングしていると,アップルは度々それを妨害した。しかし,アップルがミツコにグルーミングすることはほとんど無かった。アップルがミツコを攻撃した時,07年12月からレックスがミツコを支援して2頭で反撃する場合が出て来た。その様なときにはレックス側が優位になった。
これらのことから,ミツコの食物獲得割合の増加にはレックスが関与していると考えられ,レックスがミツコに利益を与え支援をすることで,アップルとの争いを有利に進めている可能性が示唆された。
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© 2009 日本霊長類学会
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