霊長類研究 Supplement
第25回日本霊長類学会大会
セッションID: P-26
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ポスター発表
ニホンザルの高齢の祖母による孫への世話行動
*中道 正之大西 賢治山田 一憲
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抄録
サル類において,祖母仮説(老年期不妊のメスの存在が孫の生存に有利になるように働き,結果的に,自分の娘の繁殖成功を高め,自身の包括的適応度を高めること)を支持する人口学的研究は提示されているが,孫の生存に直接的に関わるような祖母の行動についての報告はないと思われる。
私たちは,勝山ニホンザル集団において,世話を必要とする実子を持たない高齢の祖母が孫に対して授乳行動を含む特別な世話行動を持続して行った2事例を観察した。
事例1:初産メス(6歳)が生後2.5カ月の子を残して,少なくとも6日間,集団から離れていた(その理由は不明)。この母不在の間,24歳の祖母が,孫に対して,抱く,運ぶ,乳首をくわえるのを許す(乳分泌は無し),毛づくろいするなどの母親行動を行った。
母が集団に復帰後は,子は母から授乳を受けていたが,祖母に抱いてもらう,運んでもらうなどが5週間にわたり続いた。母が子を祖母に残して離れ,採食してから戻るということも頻繁に記録された。
事例2:子が生後12カ月齢の時に,母(12歳)がその子の弟を出産し,その2カ月後に,子(孫)が祖母(23歳)の乳首を口に含むのを初めて記録した。その日から,祖母が孫を抱く,運ぶ,授乳する(口唇のリズミカルな動きを2カ月目に確認)などの世話行動が6カ月以上継続した。
孫の授乳を求める行動に対して,祖母が拒否することは皆無に近かった。孫は祖母に対してかんしゃく行動も示した。この子が最も頻繁に近接,接触し,毛づくろいを受ける相手は祖母であり,その値は母に対する値の2倍から3倍の高いものであった。
これらの2事例から,祖母が母から孫を奪う,あるいは,接触を求める孫を全く受け入れないなどの両極端の行動ではなく,孫からの接触要求を受容する程度の適切な行動を祖母が行うことによって,ニホンザルの高齢の祖母が孫の生存に直接的に貢献することもあることが明らかとなった。
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© 2009 日本霊長類学会
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