霊長類研究 Supplement
第25回日本霊長類学会大会
セッションID: P-25
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ポスター発表
血縁関係がヤクシマザルの群れの広がりに与える影響
*西川 真理鈴木 真理子SPRAGUE D. S.
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抄録
ニホンザルの社会は母系社会である。ひとつの群れはいくつかの家系から成り立っており,メスとコドモは同一家系である者同士がまとまっている。ニホンザルの群れは離合集散する種に比べると凝集性が高いが,群れの広がりの中における個体間の距離は血縁関係によって変わってくると考えられる。本発表では,2人の観察者が同時にオトナメス2個体を追跡し,血縁関係の有無による個体間距離の違いと,群れの広がりの程度を明らかにすることを目的とした。
鹿児島県屋久島に生息するニホンザルの亜種であるヤクシマザルを調査の対象とした。E群のオトナメス6個体を対象に,34日間の終日個体追跡による調査を行なった。2人の調査者がそれぞれ非発情のオトナメスを個体追跡し,1分ごとに活動を記録すると同時に,GPSを用いて位置を記録し,2個体間の水平距離を求めた。
個体間距離は採食時に最も長かった。血縁関係がないペアは,血縁関係があるペアよりも個体間距離が長かった。個体間距離の最大値は血縁関係にないペアで観察された約600 mであった。また,追跡中の2個体がお互いに視界内に現れない状況が長時間にわたって続くことが17日間で観察された。
採食時にみられた個体間距離の広がりは,別々の食物パッチを選択した結果であり,採食競合を回避するためであると考えられる。ニホンザルが長時間にわたってお互いの姿を目視することが不可能なほど離れて遊動を続けることは知られていたが,個体間距離を実測することによって,2個体間の距離は時に視界範囲(20 m)をはるかに超えていることが明らかになった。
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© 2009 日本霊長類学会
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