抄録
【目的】
人類進化の過程で、ヒトは乾期と雨期が明確なサバンナへ進出した。サバンナに適応している現生霊長類からの情報は、当時の生活について私たちにいくつかの手がかりを与えてくれる。サバンナヒヒ(アヌビス、キイロ、ギニア、チャクマ)は、アフリカ大陸に生息域を分けて広く分布している。本発表では、サバンナ環境に適応しているアヌビスヒヒに注目し、食物、活動、利用地域に与える季節性について報告する。
【方法】
調査地は、ケニア共和国ライキピア県(36°50'E, 0°15'N)である。毎日6時に調査キャンプにおいて集められた雨量をもとに、季節を乾期と雨期に分けた。調査は2群のアヌビスヒヒ(Papio cynocephalus anubis)を対象に2年間実施し、それぞれのグループサイズは37頭、99頭であった。
分析に用いた群れの活動(食物採食、休息、移動、社会交渉)と位置は15分毎にスキャンして記録した。個体追跡中にヒヒが採食した食物は記録された。
【結果と考察】
調査地には、2つの雨期と2つの乾期のパターンがあった。ヒヒの1日の活動時間配分には季節変化はみられなかった。ただし、水を飲む時間ピークには違いがあり、乾期は2回の大きなピーク、雨期は小さなピークが3回認められた。食物のメニューは、乾期と雨期で変化があった。雨期の主要な食物が昆虫であったのに対し、乾期には草本が最も採食されていた。この結果は、ヒヒが乾期にフォールバックフードに食物をシフトしていることを示していることを示唆する。
ヒヒは季節に関わらず、複数の水場をつないだ遊動をしていた。また、乾期のほうが雨期に比べて広い地域を利用していた。2群の遊動域は重複が大きかったが、これらの群れは互いに出会わないようにしていた。この結果は、群れ間には限られた資源を共有するルールがあることを示唆する。