霊長類研究 Supplement
第27回日本霊長類学会大会
セッションID: P-5
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ポスター発表
初期霊長類を産するポンダウン哺乳動物相(中期始新世;ミャンマー)の古生物地理的特徴
*江木 直子鍔本 武久高井 正成ジン-マウン-マウン-テインタウン-タイ
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抄録
 ミャンマー中央部に分布するポンダウン層は中期始新世末(3800万年前)の哺乳類化石を多く産出する陸成堆積物を含む。この産地からは初期霊長類の化石が20世紀初めから見つかっており、これが真猿類の起源と関連して議論されたため、過去10年余りは複数の調査隊により集中的に発掘が行われた。結果として、ポンダウン相からは7目(霊長類、齧歯目、肉歯目、食肉目、奇蹄目、偶蹄目、目不明の有蹄類)から25科39属53種余りの多様な哺乳類が報告されている。本研究では、アジアの同時代の他の哺乳動物相との比較を通して、ポンダウン相の特徴と初期霊長類を含む哺乳動物相の拡散・移動について検討を行った。
 ポンダウン層から産出する哺乳類のうち、真霊長類、齧歯類、肉歯類ヒエノドン科、アントラコテリウム科偶蹄類については、科や亜科レベルで近縁な種が北アフリカから中国中緯度地方に至る地域で報告されている。インドや北アフリカの産出地には前期始新世のものが含まれ、始新世初めにユーラシアの低緯度地域で哺乳類の移動があったと考えられる。ポンダウン相でのこれらの哺乳類の産出は、この拡散によって東南アジアにも哺乳類が移入したことを支持する。産出哺乳類の多くは固有種である。標本が不完全で新種を確立できないものも含めると、属レベルでおよそ7割がポンダウン動物相に固有な分類群になる。また、齧歯目や肉歯目、霊長目では固有種間が近縁関係にあり、したがって、ポンダウン周辺の地域が前期~中期始新世のある期間に他の地域から隔離され、固有種の分化が起きたと推測される。ポンダウン動物相には東アジアの中~中高緯度地域から産出する分類群も存在する。奇蹄類では同じ科も産出するが、哺乳類全体や偶蹄類に対する奇蹄類の割合はポンダウン相では小さい。食肉目については中高緯度地域と共通する種が存在する。食肉類や偶蹄類の反芻類の中高緯度地域での出現は始新世末であり、ポンダウン相での産出記録の方が古い。奇蹄類の衰退や食肉類の出現という点では、ポンダウン相は東アジア北部の動物相よりも変化が先んじて起きている。
 以上の結果から、ポンダウン哺乳動物相には、始新世初めに起きたユーラシア南部~北アフリカ地域での哺乳類の拡散によって東南アジアに移入し、その後の地理的隔離によって分化したものと、始新世後半に起源したものが含まれ、霊長類は前者の特徴を反映する。
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© 2011 日本霊長類学会
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