霊長類研究 Supplement
第27回日本霊長類学会大会
セッションID: B-9
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口頭発表
チンパンジー3亜種における苦味受容体遺伝子ファミリーの分子進化
*早川 卓志菅原 亨郷 康広鵜殿 俊史平井 啓久今井 啓雄
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抄録
 <目的>哺乳類は味覚器に発現した苦味受容体タンパク質で食物の苦味を感じる。苦味受容体タンパク質はそれぞれをコードする遺伝子TAS2Rから発現され、チンパンジー(Pan troglodytes)のゲノムには28種類存在する。先行研究では、ニシチンパンジー(P. t. verus)において、TAS2Rファミリーの塩基配列の亜種内多様性が高く(塩基差異が0.078%)、受容苦味物質のレパートリーの異なるハプロタイプが、集団に維持されるように進化していることが示唆された(Sugawara et al., Mol. Biol. Evol. 2011)。しかしその多様性が植生などの環境に適応した結果生じたものであるかどうかは明らかになっていない。本研究では、TAS2Rファミリーが地理的に隔離された集団でどのように分化しているかを明らかにするため、赤道アフリカに分布するチンパンジー3亜種の塩基配列を比較解析した。<方法>10個体のヒガシチンパンジー(P. t. schweinfurthii)及び2個体のチュウオウチンパンジー(P. t. troglodytes)のTAS2Rファミリーの塩基配列を決定し、先行研究で報告されたニシチンパンジー46個体の塩基配列を加え、亜種内の多様性と亜種間での分化の程度を解析した。<結果>28種類のTAS2R計26,172塩基のうち、199個の一塩基多型が存在し、推定198個のハプロタイプが確認された。ニシチンパンジーは94個、ヒガシチンパンジーは109個のハプロタイプを有し、互いに25個しか共有されていなかった。チュウオウチンパンジーでは20個の新奇のハプロタイプが存在した。ヒガシチンパンジーの亜種内塩基差異は0.116%であり、ニシチンパンジーとの亜種間塩基差異は0.133%であった。<考察>ニシチンパンジーと同様、ヒガシチンパンジーでもTAS2Rファミリーの多様性は高かった。しかし、ハプロタイプは亜種間でほとんど共有されておらず、また塩基差異の値は亜種間が亜種内の値を上回っていることから、多様性の構成が亜種間で大きく異なっていることが明らかになった。このことは、チンパンジーのTAS2Rファミリーは、異なる地域に分布する亜種それぞれが、ハプロタイプの多様性を保持しつつも異なるレパートリーによって独自に自身の環境に適応していることを示唆している。
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© 2011 日本霊長類学会
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