霊長類研究 Supplement
第27回日本霊長類学会大会
セッションID: P-26
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ポスター発表
飼育下マンドリルにおける学習行動の文化的伝播
*田中 正之山下 直樹高井 進山本 裕己
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抄録
 後天的に獲得された行動が個体間で継承される文化的伝播については、幸島のニホンザルのイモ洗い行動をはじめとして、いくつもの報告がある。チンパンジーの母子間の知識伝播を長期継続観察している松沢らは、子どもが同種他個体の行動に対して強い興味を持ち、自分でも同じ行動をしようとする強い動機付けがあることと、子どもの試行を許す親の寛容さが伝播の重要な要素として挙げている。本研究は、類似した伝播過程が飼育下のマンドリル群で見られたので報告する。
 対象としたのは、京都市動物園で飼育されている一組の成体ペアとその子どもからなるマンドリルの群れである。研究を開始した2008年4月の時点で、オスは17歳、メスは8歳で、子どもが3頭いた。第1子が3歳5か月のオス、第2子が1歳10か月のメス、第3子は7か月で授乳中であった。本研究期間中、2009年4月に第4子のメスが、2010年7月に第5子のメスが生まれた。一方、2008年8月に第1子が、2009年4月に第2子が、2010年11月に第3子が他の動物園に移動した。
 対象群が飼育されている屋外獣舎前に、ノートPCに接続された15型タッチモニターを置いた。タッチモニター画面への反応を訓練するために、画面に触れば誰にでもリンゴ片を与えて強化した。最初に画面への反応を学習したのは成体オスであった。このオスがモニター前にいるときには、第1子と第2子は近づくことができなかったが、母親に抱かれた第3子は成体オスのすぐ横でメスとともにオスの行動を観察する機会を得た。徐々に課題の難度を上げていった結果、訓練開始から4か月後に成体オスの画面への反応が消失した。このとき、第3子が自発的に課題に参加を始めた。成体メスと第1子、第2子はこれ以降も画面に触れることはなかった。この後、第3子を対象に学習課題を始めてから生まれた第4子は、第3子の課題遂行中にすぐ横で観察し、自発的に課題に参加し始めた。この後第3子が移動し、第4子を対象として課題を継続する過程で第5子が第4子と同様に自発的に課題参加を始めた。課題に参加した子どもは3頭とも、他個体の課題を乳児期に年長の他個体の観察が可能で、離乳後に参加する際に妨害を受けず、参加時点ですでに画面上の刺激への反応が可能だった。文化的な行動伝播を示したマンドリルには、チンパンジーで提唱されたのと同じ条件が揃っていたことがわかった。
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© 2011 日本霊長類学会
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