霊長類研究 Supplement
第27回日本霊長類学会大会
セッションID: P-35
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ポスター発表
野生チンパンジーにおけるワカモノメスの行動と他個体の性皮腫脹との関連について
*井上 紗奈
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抄録
 野生チンパンジーにおいて、ある程度の年齢に達したワカモノメスは、生まれ育った群れを出て、他の群れへ移籍することが知られている。子ども期からおとな期への過渡期でもある「思春期」という発達的に重要な時期に、ワカモノメスは他者から何か“学ぶ”のだろうか。特に、同年代の外の群れから移籍してきたメスに対して、今後移籍するであろうワカモノメスがとる行動は、群れに定着したオトナメスのそれと違いがあるのか、また、その行動は性成熟の差あるいは性的状態の変化が関連しているのだろうか。
 本研究は、他個体の性的状態がワカモノメスの行動・認知にどのように影響しているのか検討することを目的とし、タンザニア・マハレ山塊国立公園のMグループを対象とした調査をおこなった(2010年12月-2011年1月)。調査対象は、Mグループで生まれ育ったワカモノメス(YF)のうち年長4個体、2010年内にMグループに移籍してきたばかりのワカモノメス(IF)4個体、性周期のあるオトナメス(AF)4個体(子どもあり2、なし2)の計12個体である。各個体2時間、1日に1-4個体の個体追跡をおこなった。調査期間は、主食となる果実が豊富に実る群れの集合期から果実が少なくなる分散期の始めにあたり、対象個体追跡中、最小2個体から最大59個体を同日中に観察した。調査期間中YF群で2個体、IF群で3個体、AF群で2個体において性皮腫脹がみられた。すべての対象個体を追跡できた4セット、48時間分について近接個体を調べたところ、YF群は、オトナメス、ワカモノメス、オスと多彩に交流を持っていたのに対し、IF群は、先行研究にあるような特定のメス、あるいはオスに近接することが多かった。AF群は、観察期間中性皮腫脹のなかった2個体へのワカモノメスからのアプローチが多く見られたのに対し、腫脹のあった2個体へのアプローチが少ない傾向がみられた。ワカモノメス間では、他個体の性皮腫脹の有無が行動に影響するデータは得られなかったが、これは、オトナメスに比べ性成熟レベルの個体差が大きいことが理由の一つとして考えられる。今後、今回の調査中に性皮腫脹がみられなかった個体の性皮腫脹時のデータを追加するとともに、移籍してから時間が経過したIF群のワカモノメスの行動の変化についても検討する。
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© 2011 日本霊長類学会
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