霊長類研究 Supplement
第27回日本霊長類学会大会
セッションID: P-36
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ポスター発表
チンパンジーによる色と図形の象徴見本合わせの長期保持
*植田 想友永 雅己
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抄録
 ヒトは過去に記憶した情報や学習した知識を数か月から数十年にわたって保持することができる。Bahrick (1984)の研究では、ヒトは50年もの間知識を保持できることが示されている。一方、ヒト以外の動物において長期記憶を扱った研究は非常に少ない。Beran et al. (2000)は、人工言語学習訓練を過去に受けていたチンパンジーを対象に長期保持に関する実験を行ってこの問題を検証し、チンパンジーが20年以上の間知識を保持していたことを明らかにした。これにより、ヒト以外の動物も10年という単位で知識を保持できることが初めて示されたが、この結果を動物の記憶研究のなかに適切に位置づけるためにはさらなる事例が必要だと考えられる。
 本研究では、Beranらの先行研究と同様にチンパンジーの長期記憶保持を検証した。チンパンジーのクロエは、10歳のときに図形を用いて特定の色を名付ける課題を学習していた(Tomonaga et al., 1991)。そして、29歳のときに刺激間の対応関係の再認をテストする実験を行った。19年間、クロエはこれらの刺激の組み合わせを見ることはなかった。課題はかつてとほぼ同じ手続きで行われた。刺激はコンピュータの画面に提示され、クロエはタッチスクリーンを用いて色刺激に対して正しい図形を選択することが求められた。ベースラインとしては、色および図形の同一見本合わせを行った。テストセッションでは、正誤のフィードバックなしのプローブ試行として色見本刺激に対して対応する図形刺激を選択する試行が少数提示された。2組の課題のうち1組の課題においてクロエは100%の正答率を示した。クロエの正答率はチャンスレベルとの比較、統制群である他個体の成績との比較の両方において有意に高く、クロエが19年間 色と図形の対応関係を保持していたことが示唆された。
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© 2011 日本霊長類学会
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