抄録
はじめに:孤立した小さな個体群は遺伝的多様性が減少しやすく、絶滅のリスクが高いと考えられている。宮城県・金華山島のニホンザルは、250頭前後という小さな個体数で他の個体群からも孤立して生息しており、絶滅の恐れのある地域個体群として環境省のレッドリストに指定されているが、遺伝的特徴は明らかになっていない。そこで、本研究では、宮城県内の他地域のニホンザルと比較することで、金華山のニホンザルの遺伝的特徴を明らかにすることを目的とした。
方法:2005年から2010年の間に、金華山島と宮城県の本土側のニホンザルの複数群から収集されたDNA試料を分析に使用した(金華山24個体・本土44個体)。マイクロサテライト8領域について個体群ごとに、対立遺伝子数・アレリックリッチネス・遺伝子多様度を測定した。また、ボトルネック効果の初期に見られるヘテロ接合体過剰を検定することで、近年のボトルネック効果の影響の有無を検討した。
結果:平均の対立遺伝子数、アレリックリッチネス、遺伝子多様度は、金華山で低かった。1座位を除いて、金華山で観察された対立遺伝子はすべて、本土側でも観察された。また、bottleneckでの解析において、金華山の個体群のみで有意なヘテロ接合体過剰が見られた。
考察:以上のことから、金華山のニホンザルの遺伝的多様性は、宮城県の他地域に比べて低いことが明らかになった。また、ヘテロ接合体が過剰傾向にあることから、ボトルネック効果の初期段階にあることが示唆された。