霊長類研究 Supplement
第28回日本霊長類学会大会
セッションID: P-40
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ポスター発表
サバンナヒヒの動物食:取り合いや分配のない社会
*松本 晶子
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抄録
 サバンナは、乾季と雨季が明瞭な熱帯地方の草原をさす。その植生は、乾燥に強い低木を交えたイネ科が主体である。このような環境では、森林に比べてカロリーの高い果実が少ないと考えられている。そのため、サバンナに生息する、体の大きな霊長類の食物として、動物食の重要性が指摘されている。しかしながら、動物食の種類、量、分配の有無についてはほとんど報告されてこなかった。
 本研究は、ケニア山西部に生息する野生アヌビスヒヒ(Papio h anubis)を対象に、植生の異なる2か所の群れにおける、動物食の実態を報告するものである。
1) ブラックコットンと呼ばれる土壌の地域は、アカシアの低木がみられる。この地域の群れでは、ヒヒによるアリの採食が多く観察された。また、アリの採食には季節性があった。
2) より山がちの、アカシアの少ない地域では、ヒヒによるウサギの捕食が頻繁におこなわれた。オトナオスによる捕食が多く、肉の保有者に対する他個体の追従行動はみられたものの、肉の取り合いや分配行動は観察されなかった。
 これまでの研究で、ニホンザルの社会にも食物の取り合いや分配がないことが報告されている。だが、それは食物の取り合いも分配も「ある」チンパンジーの社会を説明する手段として用いられてきたものである。本研究では、取り合いや分配の「ない」社会がどのようなものかを考察する。
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© 2012 日本霊長類学会
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