霊長類研究 Supplement
第28回日本霊長類学会大会
セッションID: P-41
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ポスター発表
野生ニホンザルにおけるなき交わし頻度の集団差:集団サイズ、凝集性、利用環境の影響
*鈴木 真理子杉浦 秀樹
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抄録
 ニホンザルは終日同一メンバの集団で移動している。ニホンザルのクーコールは、なき交わしによって集団のまとまりを保つのに役立っていると言われている。もしなき交わしが集団のまとまりを調整する機能を持っているのであれば、集団のサイズ(=なき交わし相手の数)や凝集性(=なき交わす必要性の強弱)の違いによって頻度が異なると予想される。しかし、集団のサイズや凝集性がなき交わし頻度に影響している可能性は今まで検討されてこなかった。本研究では、まず集団間でなき交わし頻度が異なるのかを調べ、それが集団サイズや凝集性の違いによる可能性を検討した。利用環境の違いについても検討した。
 屋久島西部海岸域に生息するニホンザル3群(KA:18頭、KZ:46頭、E :38頭)を対象にした。オトナメス17頭(KA:5、KZ:6、E:6)を対象に個体追跡法を用い、一分ごとの活動、10m以内の近接個体数、自発的発声回数、応答発声回数を記録した。なき交わしは、自発的発声とそれに対する周囲の応答率、周囲の発声とそれに対する追跡個体の応答率、について比較をおこなった。凝集性は、10m以内の個体数から近接割合を求めた。また、視界環境の測定、地理的特性の記述をおこなった。調査は非交尾期である、2007年4月-9月(KA/KZ)と2008年4月-6月(E)に行なった。
 なき交わしには集団間で差が見られた。自発的発声頻度はKAが最も高く、E、KZの順で低くなっていたが、周囲からの応答率はEが最も低かった。周囲の発声に対する応答率はKAが最も高く、KZが低かった。凝集性は、Eが最も高くKZが低い傾向が見られた。また、EとKZは道路をよく利用しているのに対し、KAはほぼ利用していなかった。サイズが大きいほど少ない発声で多くの応答をもらえるが、小さいと応答を得るために発声頻度を高くする必要があるのかもしれない。さらに、凝集性が高いまたは視界環境がよいとなき交わし自体が少なくなる可能性も示唆された。
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© 2012 日本霊長類学会
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