霊長類研究 Supplement
第28回日本霊長類学会大会
セッションID: A-17
会議情報

口頭発表
ニホンザル幸島群における遊動のシュミレーション
*森 明雄
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 サルが行動域の中をどのように動き回るのかというのは、興味深い問題である。採食樹から採食樹へ移動すると単純にはいえず、地形の影響を受ける。行動域内の1点を通過する標準通過確率が分かれば、その点の実際の通過頻度が、たまたま果実がその場所で結実したために特に高くなったといった評価を下すことができる。行動域を 20m X 20m のメッシュで覆い、実際の観察データを利用して、各区画の標準通過確率を算出する。標準とは、果実の稔らない年の通過頻度の平均値である。サルは各区画を標準通過確率で通過し、かつ、採食樹に誘引されるという、行動域内の移動モデルを利用して、遊動のシュミレーションを行った。 モデルを利用したシュミレーションと、実際の遊動データとの一致度から、移動モデルの妥当性を検証することができる。<モデル1>各区画にいるサルは、周囲の8区画を標準通過確率に従って、確率的に選択して次の区画へ進む。結果は、サルは同じ区画に繰り返し回帰し、重ね塗りをするように進む。そこで、サルの進行に直進性を持たす必要がある。観察した遊動データに 20mX20mメッシュをかけて、区画から区画への進行に、読み替える。周囲の上下、左右の区画へ進行した後、元の区画の斜め方向の区画へ進行した場合は、元の区画から直接斜めの区画へ移動したと仮定し、周囲8方向への進行方向割合を求める。<モデル2>進行方向割合と標準通過確率を掛け合わせたものを、8方向への 進行確率として、移動させる。モデルと観察はかなり一致する。<モデル3>サル道があることを考慮して、各区画は進行方向が決まっているとし、観察から各区画内からの進行方向(8方向の内1方向)を決める。方向の変異が大きい区画では、標準通過確率のみに従う。

著者関連情報
© 2012 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top