霊長類研究 Supplement
第28回日本霊長類学会大会
セッションID: A-27
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口頭発表
ルオー学術保護区のボノボによる湿地林の利用
*古市 剛史坂巻 哲也N. Mulavw Mbangi
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抄録

 近年にいたるまで,湿地帯は類人猿の生息地としてはあまり重要視されてこなかった。たとえばルオー保護区ワンバ地区のボノボは、日中頻繁に湿地林を遊動して採食するが、夕方には乾燥林に戻ってきて泊まると考えられていた。しかし最近、餌付けを行わない状態で終日追跡を行ってみると、泊まり場の10%以上が湿地林に作られていることがわかった。ルオー保護区以外でもボノボによる湿地林や水辺の利用が見直されている。ルイコタレのボノボは、頻繁に湿地林を横切って川岸を訪れ、二足で立ち上がって上半身まで水につかって水草を採食する。また、トゥンバ湖とマインドンベ湖にはさまれた50パーセント以上を湿地林が占める地域にも、かなり多くのボノボが生息していることがわかってきた。コンゴ盆地の中央部を占めるボノボの生息域は、北西部の湿地帯がえぐれたような形になっているが、この地域にボノボがいないことがはっきりと確かめられているわけではない。ボノボによる湿地林の利用実態が明らかになれば、ボノボの生態や推定個体数が大きく見直される可能性もある。この研究では、ルオー保護区のボノボの湿地林の利用実態とその季節変化を分析し、近年の他の地域のボノボや他の類人猿種による湿地林の利用についての報告と比較して検討する。

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© 2012 日本霊長類学会
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