抄録
大型霊長類の分布・アバンダンス調査では、これまで、ネストカウントに基づく手法が主流を占めてきた。しかし、ネストのアバンダンスは、崩壊速度が環境によって大きく異なること、2種の大型類人猿が共存する地域ではその作り手を判別することが困難なことから、必ずしも信頼性の高い密度指標となりうるわけではない。本研究では、ネストカウント法(ライントランセクト法及びルコネッサンス)と同時に、自動撮影カメラ法をチンパンジー(Pan troglodytes troglodytes)及びニシローランドゴリラ (Gorilla gorilla gorilla)に対して適用し、信頼性の高いハビタットモデルを作成することにした。調査は、2010年の8月(乾季)にガボン・ムカラバ国立公園の東部で行った。調査エリア(約500平方キロメートル)は、標高68mから723mにまたがる様々な植生帯を含むよう設定した。ライントランゼクト法から得られたデータは、プログラムDistanceを用いてネストのグループ密度を計算した。ルコネッサンスによるデータからは、遭遇頻度(発見ネストグループ数/踏査距離)を、自動撮影カメラのデータは、撮影頻度(撮影枚数/調査努力量)とともに、検出確率(Detection Probability)をコントロールした占有率(Occupancy rates)を計算した(Occupancy model)。この結果、ネストカウント法による密度指標と自動撮影カメラの撮影頻度の間には、ゴリラにおいては有意な相関が得られないものの、占有率との間には両種において有意な相関が得られることが確認された。ネストグループの密度、遭遇頻度、占有率を応答変数としたハビタットモデルは、いずれも、チンパンジーとゴリラは、空間的に異なる分布パターンを持つことを示した。チンパンジーは山地に、ゴリラは低地に多かった。山地には、乾季にも比較的高い果実が得られること、低地にはTHVが多いことが、その後の調査から示唆されている。両種の分布の違いは、資源の分布と各種の食資源の選好性の違いを反映したものであると考えられた。