抄録
ウガンダ共和国カリンズ森林M集団の野生チンパンジーを対象に、遊動パターンとパーティ構成の雌雄差を調べるため、オスとメスそれぞれを同時期に個体追跡し、遊動パターンとパーティの構成を記録した。先行研究によると、東チンパンジーでは、メスたちはそれぞれ狭いコアエリアを分かれて遊動し、雄は同じ集団のメスたちの遊動域をすべて含むエリアを遊動するというMale-Bondedモデルと呼ばれる社会構造をもつといわれてきたが、本研究の分析によると、カリンズ森林のチンパンジーは、ニホンザルやボノボにみられるように、オスもメスも集団の遊動域すべてを使うという、BisexulallyBondedモデルとよばれる遊動パターンを示すことがわかった。ところが、1hour party法を用いたパーティの構成をみると、オスは発情メスを含むパーティやオスたちが複数一緒に遊動するパーティで遊動していたが、メスでは、自分の子どもたちとのみ遊動することが多いことがわかった。つまり、パーティ構成でみると、ニホンザルにみられるように集団全員のメンバーと一緒に遊動しているわけではなく、Male-Bondedモデルが示すような社会構造をもつことになる。また、1日あたりの遊動を比較すると、メスはオスに比べて、遊動距離が短い結果が示唆された。本研究では、パーティ構成の変化や遊動パターンとの関係を調べ、カリンズ森林のチンパンジーにみられるオスとメスに見られる遊動とパーティ構成の違いについて考察を行い、それらに見られる雌雄差がどのように集団全体の社会構造に影響をしているのかを明らかにしたい。