霊長類研究 Supplement
第28回日本霊長類学会大会
セッションID: A-29
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口頭発表
ニシローランドゴリラの遊び行動における家族群構成の影響
*松原 幹
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抄録
 遊び行動は社会的発達において重要な役割を果たしていると言われている。様々な霊長類で、コドモはコドモ同士で遊ぶことが多いことが知られている。特に、年長との遊びは、身体的発達や運動能力の発達、自分より強い相手と接することで得られる社会的スキルの獲得といった効果がある。しかし、単雄複雌群を形成する場合、新群形成の初期は、群内にコドモが少なく、年長のコドモと接する機会が皆無、もしくは少ない場合もある。この時期のコドモの遊び相手として、オトナがあげられるが、オトナとコドモの遊びの違いについては、ゴリラでは未報告である。
 そこで英・ハウレッツ・ポートリム野生動物公園のニシローランドゴリラの家族群2群の行動観察を行った。家族群形成から10年以上経ち、常に年長コドモがいるジャラ(DL)群と、家族群形成から5年ほどで、年長コドモが皆無、または少ないジャングウ(DG)群において、遊びのレパートリー、継続時間、遊び相手を比較した。
 DL群はDG群の同年齢の個体より、遊びの継続時間が長く、遊びの誘いかけ行動が多くみられた。DL群では、シルバーバックや非血縁オトナメスが、コドモの遊び相手になる時間は極めて低いが、DG群では非血縁オトナメスがコドモと遊ぶ行動がDL群より長時間見られた。
 オトナがコドモと遊ぶ時間に群間差がみられた原因は、1)DG群はDL群よりオトナ個体の年齢が若い
 2)経産後にコドモを失ったオトナメスは、コドモと遊ぶことが多い  (Fossey, 1983)
 3)オトナの性格の個体差等が考えられる。
 ゴリラでは、非血縁メスが新群形成初期に生まれるコドモの社会的スキルの獲得にかかわることで、社会的発達を促進していると思われる。雌雄ともに生まれた群れから移籍し、新群形成するゴリラでは、こうした成長発達過程が、将来的に非血縁個体との社会交渉(求愛、群れ形成・維持)で役立つと考えられる。
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© 2012 日本霊長類学会
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