霊長類研究 Supplement
第28回日本霊長類学会大会
セッションID: A-30
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口頭発表
ニシローランドゴリラの識別群の血縁構造
*井上 英治安藤 智恵子Akomo Okoue Etienne岩田 有史十代 真理子藤田 志歩Nze Nkogue Chimene井上-村山 美穂山極 寿一
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抄録
霊長類の社会を考える上で、その血縁構造を明らかにすることは重要である。本研究では、ニシローランドゴリラの群れの血縁構造の調査を行なった。ガボン、ムカラバドゥドゥ国立公園において、2004年から、グループジャンティと名付けた群れの人付けを開始し、現在ではすべての個体を識別している。2011年4月にベッドサイトで採取した糞および随時追跡中に採取した糞など、おもに個体が判別していない糞56試料からDNAを抽出し、アメロジェニン遺伝子の一部を用いた性判別と常染色体上のマイクロサテライト16領域を用いた個体識別と血縁判定を行なった。2011年4月時点で群れを構成していた22個体のうち、DNAを用いた個体識別で19個体の遺伝子型を特定できた。糞サイズ、性判定、親子判定の結果から、観察で確認されているオトナオス1個体とオトナメス6個体はすべて遺伝子型を決定でき、コドモ1個体、アカンボウ2個体の糞が採取できていないと推定された。オトナ以外の12個体の父親は、すべて群れにいる唯一のオトナオスと推定された。同様に母親を推定したところ、8頭の母親を決定できたが、残り4頭は群れ内に母親がいなかった。また、オトナメス間の15ペア中2ペアで半兄弟以上の血縁があると推定された。DNAで復元できたオトナメスの数や母親のいない子どもの数は観察データと矛盾しない結果であった。DNAの分析から、1998年生まれと推定した個体の父親も群れのオトナオスであったので、このオスは最低でも10年以上は集団を維持していると思われる。また、オトナメス間でよく一緒にいるペアが観察されており、それが血縁者である可能性も考えられる。このように観察による個体識別とDNA判定を組み合わせることで、群れ内の血縁構造を明らかにできた。今後、集団内の個体の社会関係に与える血縁の影響を明らかにしていきたい。
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© 2012 日本霊長類学会
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