霊長類研究 Supplement
第28回日本霊長類学会大会
セッションID: B-15
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口頭発表
テナガザルの染色体端部にある大規模ヘテロクロマチンの主成分
*平井 啓久原 暢平井 百合子古賀 章彦
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抄録
 染色体の構造に関して、チンパンジーとヒトの間には顕著な違いがある。チンパンジーは多くの染色体の端部に大規模なヘテロクロマチンをもつのに対し、ヒトにはこれがみられないことである。チンパンジーのこのヘテロクロマチンの主成分は、StSat 反復配列とよばれ、32 bp の単位が縦列に連なった構造となっている。この配列の起源と機能に関する研究の途中経過を、昨年の本大会で発表した。研究は進展をみているが、近縁の生物種で同様の例があれば、比較や証明に有用であることが期待できる。同様の例は、同じヒト上科に属するテナガザル科にみられる。シアマン(Symphalangus syndactylus)に、チンパンジーのものと類似の形態の大規模ヘテロクロマチンがあり、シロテテナガザル(Hylobates lar)にはこれがない。そこでシアマンのヘテロクロマチンの主成分を明らかにする実験を行った。まずシアマンのゲノムから、コピー数の多い反復配列を多数、クローンとして得た。続いてそのうちから、シロテテナガザルではコピーが多くないものを選んだ。さらに染色体への in situ ハイブリダイゼーションを行い、端部の大規模ヘテロクロマチンでシグナルを発することを確認した。塩基配列を解読した結果、アルファサテライトDNAであることが判明した。アルファサテライトDNAは、霊長類のセントロメアの主成分となっている反復配列であり、171 bp の単位が連続している。チンパンジーのヘテロクロマチンの主成分とは異なる反復配列である。チンパンジーとヒトに加え、シアマンとシロテテナガザルの組でも、染色体端部の大規模ヘテロクロマチンの起源や機能の解明の研究が可能となった。
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© 2012 日本霊長類学会
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