抄録
あり、ヒトや動物の情動や社会行動に影響を与えることが知られている。例えば、アカゲザルでは血漿中のオキシトシン濃度が高い母ザルほど、自分の子に対して毛づくろいや授乳を頻繁に行う。ヒトにおいては、オキシトシン受容体遺伝子の多型が向社会的行動や共感性や養育態度の個人差と関連することが示されている。マカクの種間およびニホンザルの地域集団間では、寛容性に違いがあることが報告されており、我々はその背景となる遺伝子を探索してきた。本研究では、新たな候補遺伝子として、オキシトシン受容体遺伝子のエクソン領域におけるアミノ酸翻訳領域の全長配列をニホンザルで初めて決定し、それを地域間、地域内で比較した。
【方法】7地域(高浜、白山、嵐山、淡路島、高崎山、幸島、屋久島)の18個体より得た試料に対して、オキシトシン受容体遺伝子のアミノ酸翻訳領域1170bpを3組のプライマーを用いてPCR増幅し、塩基配列を決定した。
【結果】第2エクソンにおいてアミノ酸変異(Thr→Ala)をともなうSNP(A1045G)が見つかった。ニホンザルとアカゲザルでは、389アミノ酸のうち、この変異を含む2個が違うのみであった。
【考察】今後は、解析個体数を増やすことによって、今回明らかになったオキシトシン受容体遺伝子のアミノ酸変異をともなうSNPの地域間変異や地域内変異をさらに詳しく調べる必要がある。そして、ニホンザルで知られている社会行動の地域間変異と今回の遺伝的多型との関連についても、検討する予定である。