霊長類研究 Supplement
第28回日本霊長類学会大会
セッションID: P-07
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ポスター発表
ぶら下がりロコモーションの進化―用語セミブラキエーション再考
*藤野 健
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抄録
【はじめに】Napier (1963)が提唱したsemi-brachiation、semi-brachiaterの用語の定義が不明確との批判が存在する。そこで、これまで観察を行った幾つかの霊長類種のぶら下がり動作を元にこれら用語の見直しを行った。【運動性】”semi-brachiater”のbrachiation 様動作は、動作が長続きしない、手以外に足(キンシコウ、ドゥクラングール)或いは尻尾(クモザル)を媒体に接触させる、体幹が水平位から垂直位の間を大きく振れる(クモザル)などの特徴を有する。これはテナガザルの長時間の動作、体幹を立てての左右交互の胸郭の回転発生並びに胸郭に対する頭と腰(+屈曲させた下肢)の逆回転発生から成る効率的な運動から比較すると、成熟度が低いが故にsemi(=imperfect)の語を付けても間違いとは言えない。【ロコモーション分類】大型類人猿とヒトはbrachiation の成熟度は高く基本的にテナガザルと同様の運動特性を持つが、低頻度ゆえ別の分類名が与えられる。同じくbrachiation 様動作は四足歩行性、立位掴まり歩行などの合間に観察され、これらの動物には主たるロコモーションではない。【考察】Napier が運動性の十分な観察から遠くしてこの用語を採用したのは、これらのサルが単なる四足歩行性に留まらず、「ぶら下がり、腕渡りも行える」ことを急ぎ強調したかったからに他なかろう。arm-using suspensory locomotionの視点からは、semi-brachiater と呼んで正しいが分類名としては混乱を招き得る。”semi-brachiater”のぶら下がり運動性の更なる詳細な観察と解析が、ヒトに至る投擲・道具使用等の前肢運動能獲得と二足歩行能獲得への解明のみならず、合理的なロコモーション用語の命名に不可欠のものと考えた。
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© 2012 日本霊長類学会
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