抄録
ニホンザルにおいては、20齢台前半では卵巣機能は正常に保たれているものの不妊となる個体が増え始め、20齢台後半からは血中エストロゲンやプロゲステロンの分泌にピークや周期性が見られなり、顕著な卵巣機能の低下を示すようになる。30齢頃では排卵はほぼ停止し、エストロゲンやプロゲステロンの値は平坦になる。
生殖関連ホルモンは交尾行動に強く影響を与えることが知られているが、京都市嵐山で餌付けされているメスニホンザルでは、高齢で繁殖に結びつく可能性が低いと考えられるにもかかわらず、頻繁に性行動を行う個体が観察される。そこで、高齢個体における性行動と生殖関連ホルモンとの関連を生殖生理学的に理解することを目的に、嵐山にて性行動が観察された高齢個体2個体において、性行動と生殖関連ホルモン動態の関連について調べた。
2011年度の繁殖期間中に、性行動が観察された高齢個体2個体(32齢および26齢)から糞を採取した。さらに、顔の色に基づく発情の度合いや、性行動の有無を記録した。酵素免疫測定法により糞中性ステロイドホルモン代謝物であるE1CおよびPdG量を測定し、高齢ニホンザルにおける性周期および排卵の有無について調べ、生殖関連ホルモンと性行動との関連について考察を行った。
今回対象とした2個体に関しては、糞中E1Cの値が高い時に、頻繁に性行動が観察されていた。この結果は、高齢のニホンザルにおける性行動と性ホルモン動態とに深い関連があることを示唆している。