抄録
野生鳥獣による農作物被害対策の一つに,ほ場周辺での加害獣の捕獲という方法がある.特に被害農家自身の手による捕獲は各自治体でも推奨されており,農家にわな猟免許の取得を促したり,自治体でわなを購入して貸出しするなどの対策をとっている所も多い.しかしながら,被害対策として初めて捕獲に挑む農業者にとって,野生動物の捕獲手法は情報が少なく,安全・簡便かつ効率の高いわな具の開発と運用手技に関する情報が必要とされている.そこで,本調査では野生鳥獣対策事業の一つとして,農業者へのわなの貸出しと同時に自動撮影カメラの貸出しを行い,わな具への加害獣の反応を記録して新しいわな具開発のための情報を集めた.調査は静岡県浜松市の天竜地区,春野地区,佐久間地区で実施した.自動撮影カメラは UWAY 社製 NT50B を用い,ほ場周辺での箱わな,くくりわなの設置とともにカメラも設置した.カメラの運用は協力農家の都合に合わせたため正確なカメラナイト数,トラップナイト数は不明だが,のべ 1,628 個のムービーファイル (計 16.88 GB, 30 秒ファイル平均 14.3 MB 換算で,約 590 分相当)を記録した.記録された動物は,出没が 1 時間以内の連続である場合は 1 バウトとし,動物種と個体数をカウントした.記録されたのべ動物数は多い順に,イノシシ 115 頭 (うち幼・亜成獣 69 頭),タヌキ 77 頭,アナグマ 10 頭,リス 2 頭,カラス 2 羽,ハクビシン 1 頭,シカ 1 頭であった.また,わなによる捕獲シーンはくくりわなによるイノシシ捕獲 4 回 (うち作動の瞬間 3 回) ,箱わなによるイノシシ捕獲 1 回,くくりわなによるアナグマ捕獲 4 回 (うち作動の瞬間 1 回) ,箱わなによるタヌキの捕獲 1 回 (うち作動の瞬間 1 回) の記録が得られた.