霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: D3-2
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口頭発表
モンゴル夏営地における子山羊の母山羊への音声と行動
*苗川 博史
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抄録
 本研究は,母山羊から一時的に隔離された子山羊の音声の状態について,動物福祉評価に必要な客観的指標となりうる不快や苦痛な場面での音声を考察するため,モンゴル夏営地における子山羊の母山羊に対する音声の意義について検討することを目的とした.
 調査は 2004年 8月にモンゴル国ウブルハンガイ県ブルト地区の遊牧民の夏営地において,子山羊の母山羊に対する音声 222場面を解析の対象とした.音声はデジタルビデオカメラによる記録を元に,映像をモニタリングしながら USBオーデイオインターフェイス経由でパソコンに取り込み,音声解析ソフト(SUGI Speech Analyzer)により解析した.解析項目は,発声持続時間,基本周波数,ホルマント,音圧とした.
 発声持続時間は,係留地の子山羊群から母山羊群への吸乳行動に至る音声と放牧下の子山羊から母山羊分離の音声には違いがあり,その差は有意であった(P<0.05).音圧は,係留地の子山羊群から母山羊群への吸乳行動へ至る音声と放牧下の子山羊から母山羊への吸乳行動に至る音声および放牧下の子山羊からの発声間において違いがあり,その差は有意であった(P<0.001).また,基本周波数は,放牧下の子山羊から母山羊への吸乳行動に至る音声と放牧下の子山羊からの音声に違いがあり,その差は有意であった(P<0.05).さらには,第1ホルマントにおいて,係留地の子山羊群から母山羊群への吸乳行動に至る音声と放牧下の子山羊から母山羊への遭遇行動に至る音声には違いがあり,その差は有意であった(P<0.05).
 係留地における子山羊の音声は他の状況に比べ,発声持続時間,音の高さと大きさを変えて母山羊に発声していること,日帰り放牧行動時の子山羊から母山羊の吸乳へ至る音声は,音の高さや大きさを変えて情報伝達していることが読み取れた.
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© 2013 日本霊長類学会
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