霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-18
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ポスター発表
名古屋市の野生化アライグマ (Procyon lotor) に認められた歯の変異
*曽根 啓子*子安 和弘*織田 銑一
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抄録
【背景・目的】アライグマは全国的に野生化が確認されている外来種で,愛知県では半世紀に及ぶ歴史がある (揚妻 -柳原,2004).愛知県,特に名古屋市の野生化個体群においては,永久歯臼歯列の歯根部に高頻度で変異が出現することを報告したが (日本哺乳類学会 2010年度大会),その詳細については不明であった.そこで,名古屋市の野生化アライグマの歯根を含む歯の変異の出現状況を把握する目的で,変異の出現状況に関する調査を行った.
【材料・方法】観察には 2007-11年度に有害獣対策で捕獲され,国立科学博物館と愛知学院大学歯学部歯科資料展示室に収蔵されている晒骨標本のうち,永久歯列を有する 79個体を用いた.可能な限り抜歯した状態で,臼歯列 (小臼歯 (P 1-P4/P1-P4)と大臼歯 (M 1-M2/M1-M2))の形態を肉眼で観察し,認められた変異の種類と歯種を記録した.
【結果・考察】観察個体のうち,下顎 P 1あるいは下顎 P 2の欠失が27.8%,下顎 P 2の捻転が 7.6%で認められた.捻転が認められた歯のうち,その半数以上が,前方の歯種 (下顎 P 1)が欠失した個体であった.また,臼歯歯根において過剰根および歯根癒合が高い頻度で認められ,その出現率はそれぞれ 97.5%および 55.7%であった.過剰根は上下顎 P 2/P2および下顎 M 2に多く出現し,特に下顎 M 2の両側に過剰根を持つ個体の割合は高く,全体の 80%以上にも達していた.歯根癒合は上顎 M 2で最も出現数が多く,次いで下顎 P 2および下顎 M 2に多く出現していた.これ程高い頻度で過剰根や歯根癒合が確認された例は,他の食肉目動物でも報告されていない.したがって,名古屋市の野生化アライグマでは,その起源となった繁殖集団内に過剰根や歯根癒合といった歯根変異を持つ個体が極めて高い比率で存在し,このような変異が現在まで遺伝的に保持されていることが示唆された.
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© 2013 日本霊長類学会
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