霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-20
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ポスター発表
チンパンジー木登り運動における上肢利用の左右差
*中野 良彦
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抄録
 霊長類の利き手についての研究は,類人猿,オマキザル類,マカク類など様々な種で行われているが,とくにチンパンジーでは様々な場面について報告されている.その結果,多くの報告において個体レベルでの利き手の存在はほぼ認められている.しかし,ヒトの右利きの優位性のような種あるいは集団レベルでの利き手については,Hopkinsらのグループは飼育集団での実験研究から集団レベルでは右利きが優位であるとしているのに対して,McGrewらによる野生チンパンジーにおける研究では,集団レベルでの利き手はみられないとされており,まだはっきりとした結論はみられておらず論争が続いている.
 しかし,こうした研究のほとんどは道具使用などの操作場面における手の利用について調査したものであり,運動時における左右差についての報告は少ない.
 報告者は,これまでチンパンジーの垂直木登り運動の年齢変化を記録するため,林原類人猿研究センター(岡山県玉野市)において,年2回のビデオ撮影による継続的な観察研究を行ってきた.それらの記録から,上肢利用における左右差が認められるかについて検討した.例数が少ない(オス2頭.メス2頭)こともあり,今回は左右差の傾向が実際に認められるかの確認に重点をおいた.なお,残念なことに林原類人猿研究センターは,2013年3月をもって閉鎖され,現在はこの観察研究は中断している.
 結果として,木登り運動における接地パターン,運動時間などの運動学的データに関しての左右差は認められなかった.しかし,木登り運動の終了を示す木製ポールの上端に触れる際に用いる手について,オス2頭では有意な差がなかったが,メス2頭については,左右差が認められ,先行研究と同様に個体による左右差の存在が示された.
 また,さらに年齢変化などの要因との関連について検討した結果も加えて発表を行う予定である.
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© 2013 日本霊長類学会
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