霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-29
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ポスター発表
クビワオオコウモリによるビロウ花序の食い落とし行動
*阿部 悠*奥田 康平*傳田 哲郎*小林 峻*合田 雅浩*東 和明*伊澤 雅子
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抄録
 クビワオオコウモリはトカラ列島以南の南西諸島から台湾,フィリピンに分布し,国内では4亜種が知られている.本種は植物食で,果実や葉,花など様々な植物種・部位を餌として利用し,ヤシ科のビロウもその一つである.オオコウモリが餌を食べた後には,通常,齧られた果実の残りや果汁を吸収した残り滓(ペリット)が落ちているが,ビロウの場合それらの食痕とは異なり,齧りとられた花序自体が木の下に多数落ちている.本研究では,クビワオオコウモリがビロウを採餌する際の採餌行動を明らかにすることを目的として,2011~ 2013年の開花期に,南大東島においてダイトウオオコウモリによるダイトウビロウの採餌行動の野外観察を,また,飼育下でオリイオオコウモリによるビロウの採餌行動の観察を行った.
 オオコウモリは, ①花梗部分から花序を齧り取る, ②齧り取った花序の根元を噛み,滲みだした花序液を摂食する, ③ある程度噛んだ後に花序を下に落とす, ④花序を齧り取った痕を噛んだり舐めたりして滲みだした花序液を摂食するということが明らかになった. ①~ ③の一連の行動を「食い落とし」と呼ぶこととする.調査中にオオコウモリが花序を食い落とした切り口から採取した花序液の糖度は 12%であった.これは Helversen (1993)によるコウモリ媒花の蜜の糖度と合致している.また,南大東島での調査中に,ダイトウオオコウモリが花序を食い落とした切り口から大量の花序液が流れ出ていることが観察された.したがって,クビワオオコウモリは花序を食い落とすことによって良質な餌を大量に得ることができると考えられる.また,クビワオオコウモリが花序を食い落とした切り口から滲みだした花序液は鳥類,昆虫類を中心に様々な動物によって利用されていることが観察された.オオコウモリの食い落とし行動は,他の花蜜食の動物に新たな餌場を創出していると考えられる.
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© 2013 日本霊長類学会
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