霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-192
会議情報

ポスター発表
第四紀の環境変動に伴ったクロテンの集団史と北海道を中心とした島嶼での多様性創出
*木下 豪太*佐藤 淳*細田 徹治*鈴木 仁
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
 クロテン(Martes zibellina)はユーラシア大陸北部に広く分布する森林性の小型食肉類であり,第四紀の環境変動に伴った植生変化に大きな影響を受けたと推測される.また,毛色など形態の多様性が高く,地域集団の分類も課題とされている.本研究では,ウラルから極東に及ぶ分布の広域から収集した全 279個体を対象に,ミトコンドリアDNA(mtDNA)の ND2遺伝子の配列(976 bp)を解読し,集団史の推定を行った.合わせて,極東の島嶼と大陸集団における毛色関連遺伝子 Mc1r全長(909 bp)の配列を解読し,その多型と毛色との対応,及びハプロタイプの地理的分布の傾向を調べた.その結果,大陸集団からおよそ 30-40万年前に分岐した 3つの mtDNA系統(R1-R3)が確認され,いずれもウラルと沿海州で遺伝的多様性が高く,分布の東西で広く共有されていることが明らかとなった.一方,カムチャツカ半島では R1系統の限られたハプロタイプのみが検出され,創始者効果の影響が示唆された.また,サハリン・北海道・南千島では,R1系統からおよそ 16万年前に分岐した島嶼固有の系統 H1が分布している一方で,サハリンからは R2系統のハプロタイプも見つかった. Mc1rの解析からも,島嶼には大陸のクロテンと共通な系統と,ニホンテンやアメリカテンとも近縁な祖先系統が混在していることが判明し,さらに北海道からは全身黄色性をもたらす変異をもったハプロタイプも複数個体から見つかった.これらの結果から,クロテンは第四紀の環境変動による森林帯の分布変化により,ユーラシア大陸の広域で系統の分断化と拡散を経験した一方で,カムチャツカ半島へは近年の放散によって分布を確立したと考えられる.また,北海道を中心とした極東の島嶼は独自の系統分化と多様性創出の舞台となっていることが示された.
著者関連情報
© 2013 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top