霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: B2-3
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口頭発表
知床半島ルサー相泊地区におけるエゾジカの個体群モニタリング
*石名 坂豪*田澤 道広*白栁 正隆*能勢 峰*遠嶋 伸宏*葛西 真輔*山中 正実*寺内 聡*増田 泰
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抄録
 ルサ-相泊地区(約 20 km2)は,知床半島東側の世界遺産地域内におけるエゾシカの主要越冬地である.同地区のエゾシカ捕獲(環境省事業)は 2009年度に開始された.同地区のエゾシカ生息状況は,捕獲開始前から調査されてきた.本発表では各調査結果を整理し,近年の同地区における個体群動態を推測する.スポットライトセンサス(以下SLC,羅臼町事業,1999-2013年)の結果は,春期をピークに季節変動した.最大カウント数は 03年 4月の 403頭(39.5頭/km)であった.その後の春期は 200頭台で推移し,12年 4月には 97 ± 34頭(Mean ±SD,密度指標値平均 9.5頭/km)まで減少したが,13年 4月には 135 ± 46頭(平均 13.2頭/km)に増加した.メス成獣の割合は全体の 65.4-79.3%であった.また 0歳子の百メス比は平均10.1(範囲7.4-16.2,09-13年春期)であった.冬期の午後に道路沿いのエゾシカをカウントする日中ロードセンサス(知床財団独自調査,06-09年度,)の最大確認数は,10年 3月の 369頭(46.1頭/km)であった.ヘリコプターセンサス(環境省事業)による同地区の一部(U12, U13:計22.4km2)の結果は,03年 242頭(10.8頭/km2),11年 284頭(12.7頭/km2),13年 215頭(9.6頭/km2)であった.生存確認済み標識個体の SLC実施時の再発見率から,メス成獣の生息数を標識再捕獲法(Petersen法 Chapman修正式)で推定した結果は,09年春 348.5± 39.9頭(Mean ±SD),10年春 361.5 ± 51.6頭,11年春 327.7 ± 94.2頭,12年春 184.0 ± 46.5頭であった.これらの推定値は,SLCにおけるメス成獣目視数の 2.0-2.4倍であった.以上より,同地区のエゾシカは 03年頃をピークにその後も高密度状態を維持していたが,11年度冬の捕獲圧により一旦減少したと推測された.しかし雪崩等により 12年度冬の捕獲圧が不足したため,自然増と流入によって再び増加した可能性がある.13年度冬に捕獲対象となる個体群のサイズは,約 300-360頭と推定された.
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© 2013 日本霊長類学会
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