抄録
アルファサテライト DNA は,霊長類のセントロメアの主要な構成成分となっている反復配列である.前演題の目的での反復配列解析から,ヨザルには2種類のアルファサテライト DNA があることが判明した.コピー数は同程度であり,2種類がヨザルのゲノムに共存していることになる.この状況に至った過程を推測した.
2種類を OwlAlp1 および OwlAlp2 とよぶことにした.反復単位のコンセンサス配列の長さは,OwlAlp1 が 184 塩基対,OwlAlp2 が 344 塩基対であった.OwlAlp2 の塩基配列は OwlAlp1 を包含していた.染色体上の位置は,OwlAlp1 が セントロメア狭窄(細胞分裂時に紡錘糸が結合する部位)OwlAlp2 がセントロメア周辺部であった.調べた限り他の新世界ザルには,OwlAlp1 に相当する配列,はない.
OwlAlp2 は,新世界ザルのアルファサテライト DNA と,塩基配列が全域にわたって類似しており,「標準型」のアルファサテライト DNA であるといえる.そして OwlAlp1 は「派生型」であると考えられる.ところが「派生型」のほうが,セントロメアの機能に関してより重要な部位に存在している.以上から,ヨザルにつながる系統が他の新世界ザルから分岐したあとでこの派生が起こり,すべての染色体で,セントロメアの重要な部位のみこれで置き換わったことが考えられる.出現から置き換わりまでが種分化の後で進行しており,急速な変遷であるといえる.したがって,「派生型」が新規の機能を獲得したという推測も成り立つ.