霊長類研究 Supplement
第30回日本霊長類学会大会
セッションID: P32
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ポスター発表
GPS測位に基づく野生ニホンザルの移動方位データの円形度数分布
*SPRAGUE David S.*西川 真理*鈴木 真理子
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抄録
GPSを携帯することによって霊長類の野外調査中に調査対象の個体や集団の位置情報を詳細に記録し、これらの位置情報から移動の距離、ルート、方位等を構築することができる。さらに、複数の研究者が同時にGPSデータを記録することにより、観察個体同士の移動の相互関係を明らかにすることが可能である。本研究では、屋久島におけるニホンザルのオトナメス6頭を対象とした観察者2名による2個体同時追跡調査中に、観察者が携帯したGPS装置から得られた測位値を基に追跡個体の位置関係及び移動方向を調べた。5分間隔の移動から、1個体の移動方位、2個体の相対的位置、及び2個体間の移動方向の違いを計算し、円形度数分布を求めた。その結果、個体の移動コンパス方位に明確な偏りはなかった。また、2個体の相対的位置のコンパス方位は不均一でありながら、明確な偏りは見受けられなかった。しかし、2個体の移動方向の分布にはおおむね同じ方向へ移動することを示す0度の方向に一定の偏りが見られた。以上から、まず、個体の移動方位に偏りが見られなかったことから調査期間中の群れの遊動域は安定していたと考えられる。また、各観察者の追跡個体の遊動域に違いはなかったと解釈できる。さらに、2個体による移動方向の同調傾向は、このような総サンプル変異の中にも群れとしての移動性向が多少現れる可能性を示唆する。ただしGPSデータには常にある程度の測位誤差が存在する。そのため、移動方位の計算は誤差変異によって強く影響される。特に、短時間又は短距離の移動から計算する方位は大きく変動することが想定されるので、移動方位の傾向が安定して明確に現れるような時空間スケールを確認する分析が必要である。
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© 2014 日本霊長類学会
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