霊長類研究 Supplement
第30回日本霊長類学会大会
セッションID: P31
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ポスター発表
屋久島に生息する野生ニホンザルの活動と移動方位の同調性
*西川 真理*鈴木 真理子*SPRAGUE David S.
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抄録
動物は群れを形成することで、捕食者や食物の発見効率を上げることができる。こうしたメリットを得るためには、群れの個体同士がある程度空間的にまとまる必要がある。一般に動物は空間的にまとまるために行動を同調させる必要があるとされている。しかしながら、ニホンザルのように複雄複雌で構成され、同じ群れの個体間に明確な順位序列のある社会をもつ群れの場合、群れの個体はそれぞれが生理的・社会的に異なる動機を持つと考えられるため、1日の遊動の過程で活動のタイミングや目的地が一致せず、群れのメンバーが一時的に離散すると予想される。実際に屋久島や金華山では、群れの個体同士が視界のみならず音声の可聴範囲を超えて広がっていることが近年になって明らかにされた。しかし、群れのメンバーの活動や移動方位の同調性とそれに影響を与える要因については分かっていない。そこで本研究は,屋久島に生息する野生ニホンザルの一群を対象として,群れの個体の活動と移動方位の同調に、空間的凝集性・社会的要因・生理的要因が及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。
調査は屋久島の西部低地域に行動圏をもつE群のオトナメス6個体を対象として、2008年4月~6月におこなった。2名の観察者がそれぞれの観察個体を同時に終日個体追跡することで個体の活動(採食、移動、休息、毛づくろい、その他)を記録した。また、観察者が個体追跡中に携帯したGPS受信機で得た位置データを用いて観察個体間の水平距離とそれぞれの移動方位を算出した。分析の結果、全体として個体間の活動の同調性は低く、活動の同調に影響する要因は各活動カテゴリーによって異なることが明らかになった。また、移動方位は個体が凝集しているときに同調する傾向があった。これらの結果を用いて、ニホンザルが群内競合を避けるために行動した結果、行動の同調性が低くなっていることを考察する。
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© 2014 日本霊長類学会
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