抄録
現在、本研究所で飼育されているチンパンジー12個体を対象に、食事内容の改善を図っている。これまでに3回(2013年11月、2014年8月、2015年2月)の食事調査をおこない、各調査期間中(7~8日間)に彼らが食べているものを個体ごとに全て記録した。そこから各個体の採食量、摂取カロリー、各品目割合を算出し、体重と体重から求めたエネルギー要求量も考慮して食事内容を調整している。アメリカ動物園水族館協会が発行したチンパンジーの飼育マニュアル(2010)では、果実類の割合は給餌総重量の25%以下、緑色葉物食品(枝葉も含む)は総重量の45~50%程が望ましいとされている。これに対して本研究所の当初の給餌内容は、果実類が総重量の約50%を占めていた。葉物野菜は6~7%程であり、枝葉の安定した供給はできていない。葉物野菜は飼育下で不足しがちな繊維質を多く含んでおり、また低カロリーであるため、採食量の増量やエンリッチメントへの利用も期待できる。同じく本調査結果から、本研究所の給餌量は京都大学野生動物研究センター熊本サンクチュアリで設定された最低給餌量を満たしていないことも明らかとなった。そこで1回目の調査後、葉物野菜を中心に野菜の増量を試みた。当初、増量した野菜は夕食時に与えた。しかし、葉物野菜の多くはチンパンジーたちの嗜好性が低いため、1日の中でも給餌量の多い夕食時に与えると残されることが多かった。これを改善するために、一部の葉物野菜の給餌時間を変えたところ、多くの個体においてその残飼率を改善でき、効率良く葉物野菜の増量ができることがわかった。その後も同様の取り組みを続け、3回目の調査終了時点で果実類の割合は45~47%、葉物野菜の割合は10~12%であった。今後は果実類の減量や枝葉の安定した供給を目指し、チンパンジーたちの健康維持に努めたい。