霊長類研究 Supplement
第32回日本霊長類学会大会
セッションID: B03
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口頭発表
ヒトとニホンザルにおける甘味感受性の比較
西 栄美子筒井 圭今井 啓雄
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抄録

味は食物が採食者に対しどのような影響を与えるかを示す情報である。脊椎動物はそれぞれの食性に合わせて味覚受容体の機能を変化させることで多様な味覚を獲得してきた。中でも甘味は栄養価の高い糖が食物中に含まれることを意味するため、ヒトをはじめ多くの霊長類が甘味を好むことが知られている。天然に存在する糖の中でヒトが最も強い甘味を感じる糖はスクロースである。このことから、ヒト以外の多くの霊長類でも行動実験によるスクロース感受性の測定が行われており、霊長類種間で甘味を感じる濃度が異なることが確かめられている。これらの感受性の違いは甘味受容体を構成するサブユニットTas1R2/Tas1R3におけるアミノ酸配列の種間差が原因だと考えられているが、甘味受容体機能と甘味感受性の関連性について直接比較を行った研究は少ない。また、ヒト以外の霊長類が野生下で採食する食物にはスクロースはほとんど含まれていない。そこで、本研究では葉・果実・樹皮など食性の幅が広いニホンザルに焦点をあて、野生下の採食行動における甘味感覚の役割を解明すべく分子レベルと行動レベルにおける実験を行った。まず甘味受容体機能を調べるため、ニホンザルのTas1R2/Tas1R3を強制発現させた培養細胞を用いて様々な天然の糖類に対する応答を測定した。その結果、ヒトのTas1R2/Tas1R3では応答を示さない糖に対し、ニホンザルのTas1R2/Tas1R3では低濃度でも強い応答を示すことが分かった。さらに飼育下のニホンザル4個体の同溶液に対する感受性を二瓶法によって測定したところ、受容体が応答し始める濃度と同程度の濃度から積極的に溶液を摂取するようになる結果が得られた。これらの特定の糖に対する高い感受性、及び受容体機能はニホンザルが高栄養価の食物を選択し、積極的に採食するのに役立っている可能性がある。今後、食性の異なる霊長類と甘味受容体機能を比較することで、霊長類の甘味感覚と食性の関連性について調べる予定である。

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© 2016 日本霊長類学会
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