霊長類研究 Supplement
第32回日本霊長類学会大会
セッションID: P32
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ポスター発表
野生ニホンザルにおける尿中オキシトシンレベルと社会性の関連
大西 賢治上野 将敬藤田 志歩中道 正之
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抄録

近年、哺乳類の神経ペプチドの一種であるオキシトシンが、多くの社会行動や社会的認知を制御していることがわかってきた。しかし、個体ごとの社会性とオキシトシンの関連についての研究はまだ少ない。本研究では、餌付け野生集団である勝山ニホンザル集団において、野生下での尿中オキシトシンの採取、測定方法を確立することを目指した。また、成体メスを対象に、測定した尿中オキシトシン濃度と毛づくろいネットワークにおける個体の社会性の関連を検討した。勝山ニホンザル集団において、2014、2015年の間に、成体メスが、アスファルト、石、葉等の採取可能な場所に排尿した際、使い捨てスポイトを用いて、直接尿を採取した(73サンプル)。尿はその場で冷凍して実験室に持ち帰り、尿中オキシトシンレベルの測定を行った。測定には、ENZ社のオキシトシン測定キット(Oxytocin ELISA kit ENZ; catalog no. ADI-901-153A-0001)を用いた。測定結果を用いて、平行性テストと回収テストを行った結果、測定結果は基準を満たしており、野性ニホンザルの尿中オキシトシン測定の方法を確立できた。次に、尿中オキシトシン濃度と社会性の関連を検討した。個体の社会性指標は、2010年から2012年の間に走査サンプリングによって得られた毛づくろいデータから算出した。65頭の成体メスによる7432回の毛づくろい交渉が用いられた。オキシトシンと社会性のデータがそろっていた26個体(53サンプル)を対象に分析した結果、尿中オキシトシン濃度が高いほど、毛づくろいネットワークにおいて他個体を毛づくろいする量が多かった。毛づくろいを受ける量や毛づくろい相手数と尿中オキシトシン濃度は関連していなかった。以上の結果から、オキシトシン濃度が高い個体は、他個体に対して社会交渉を行うモチベーションが高い可能性が示唆された。

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© 2016 日本霊長類学会
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