霊長類研究 Supplement
第32回日本霊長類学会大会
セッションID: P33
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ポスター発表
フサオマキザルの年齢カテゴリー弁別は種を超えるか?
川口 ゆり黒島 妃香藤田 和生
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抄録

社会的な動物種にとって、他個体の年齢は非常に重要な情報である。ヒトは顔の輪郭、肌の質感、目の領域など、さまざまな情報を用いて他者の年齢を推定していることが示されている。またヒトは、ヒト以外の動物の顔刺激に対しても、その年齢(月齢)をある程度認識できることが分かっている。一方、ヒト以外の動物が顔から年齢を推定しているのか、また「おとな」、「子ども」という年齢カテゴリーを持っているのかについてはよく分かっていない。本研究では、フサオマキザル(Cebus apella)が同種他個体及び他種の顔刺激に対して年齢カテゴリーを持つかどうかを、象徴見本合わせを用いて調べた。4個体のフサオマキザル(オトナオス1個体、オトナメス3個体)を対象に、1ペアずつ新奇な同種のおとなと子どもの顔写真を提示し、それぞれの刺激に対して2つの幾何学図形の一方を合わせる弁別訓練を行った。参加個体の成績が学習基準に到達したのち、新奇なおとなと子どもの顔刺激対をプローブ試行として導入し、般化テストを行った。プローブ試行では、正誤によらず無差別に反応を強化した。その後、その刺激対についても学習基準に到達するまで弁別を訓練した。これを繰り返し、10ペアの同種の顔刺激に対して弁別訓練と新奇ペアテストを交互に行った。結果、すべての個体において、訓練時に学習基準に到達するまでに要するセッション数が2、3ペア目から大幅に減少し、いくつかのペアに対しては般化テストで統計的に有意に正答した。次に、新奇テストとして、他種(ヒト、イヌ)の顔刺激を呈示した。結果、他種の顔刺激のテストに関しては、正答率はチャンスレベルと変わらなかった。これらの結果は、フサオマキザルが同種他個体の顔刺激に対しては「おとな」と「子ども」をカテゴリー弁別しているが、その弁別手がかりは自種限定的なものであり、他種の顔刺激にも適用される一般的なものではないことを示唆している。

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© 2016 日本霊長類学会
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