霊長類研究 Supplement
第32回日本霊長類学会大会
セッションID: P39
会議情報

ポスター発表
ナショナルバイオリソースプロジェクト「ニホンザル」の現況と将来展望
中村 克樹宮本 陽子浜井 美弥伊佐 正東濃 篤徳南部 篤
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)「ニホンザル」は、平成14年発足以来、自然科学研究機構生理学研究所(代表機関)と京都大学霊長類研究所(分担機関)の協力のもと推進されてきた。第1期(~平成18年度)には繁殖母群形成と繁殖・育成体制確立、第2期(~平成23年度)には円滑な提供体制構築に努め、第3期の平成27年度までに32の大学・研究機関に555頭を提供する実績を上げた。提供個体が貢献した研究成果は、高次脳機能研究や精神神経疾患の病態解明や治療法の研究を中心に、最近では感染症・再生医療・遺伝子治療などの先端医療技術開発に寄与する基礎研究など多様な分野に広がりを見せている。プロジェクトの意義を一般に広く周知するため、ホームページ・公開シンポジウム・学会展示などの広報活動を行うほか、研究者コミュニティの意見交換の場として実験動物使用者会議を運営し、ニホンザルの適正な飼養や獣医学的管理に寄与する基礎データ・霊長類の実験使用をめぐる国内外の状況・実験動物福祉に関する最新情報などの収集・蓄積を行い、HPやメーリングリストを活用した情報提供も行っている。公平かつ透明性の高い運営を実現するため、提供申請の審査や感染症対策など、事業の基本方針を決定する際には、実験動物学の専門家や霊長類の生態・飼育管理専門家、さらには法曹関係者などによって構成される運営委員会の議を経て決定する。提供先となる機関に対しては、実験動物福祉の向上や実験適正化に関連する法令やガイドラインを遵守した飼育環境の整備を十分に理解し意識してもらい、実験計画が各研究機関の承認の確認や、サル生体を取り扱う研究者全員に対するプロジェクト主催の講習会受講を申請受付条件とすることで、ユーザーのコンプライアンス意識向上にも取り組んでいる。本発表では現在までの事業を総括するとともに、今後の展望について報告する。

著者関連情報
© 2016 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top