霊長類研究 Supplement
第34回日本霊長類学会大会
セッションID: A17
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口頭発表
マハレのチンパンジーの道具使用の横断的変化
*島田 将喜
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抄録

タンザニア・マハレのチンパンジー(Pan troglodytes schweinfurthii)のM集団の道具使用をギニア・ボッソウのチンパンジー(P. t. verus)のそれと比較した場合,前者の道具の主な素材は植物質であり,アリ釣りに代表されるように細い植物への操作を伴う行動が多い一方,後者は植物に加えて岩石が主な素材であり,ナッツ割りに代表されるように同時に複数の物体や行為の組み合わせる行動が多い。またマハレではオトナのアリ釣りの頻度はメスの方が高く,ディスプレイの頻度はオスの方が高い。本研究では,幼年期の物体保持行動はオトナ期以降の道具使用の準備であるとする仮説が,各集団の道具使用の形成を説明できるかどうかを検討した。2008年から2017年にかけて断続的に10年間(合計161調査日),マハレM集団を対象とした長期調査を行った。アドリブサンプリング法を用いて,保持した個体や保持された物体を記録した。718例の物体保持のうち622例が植物,48例が岩石だった。岩石は39例がディスプレイに用いられた。同時に複数の物体を保持する例は3.2%だけで,物体同士を組み合わせる行動は一度も観察されなかった。社会的遊びにおいて複数の個体が同時に物体を保持する例のうちの43.2%が,同一物体の保持や役割交代の事例だった。アカンボウは,オス・メスともにコドモは社会的遊びや弄びが大半を占めたが,メスではコドモ期以降アリ釣りが急増し,オスではオトナになってディスプレイが急増した。環境の影響を否定するものではないが,物体保持の初期発達は集団によって異なり,所属集団の道具使用の特徴は,物体保持の初期発達に影響を与えていることが示唆された。

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© 2018 日本霊長類学会
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