主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 34
開催地: 東京都
開催日: 2018/07/13 - 2018/07/15
テングザルは,ボルネオ島の沿岸部,川沿いの森に生息している。マングローブ林における本種の直接観察は,林床のぬかるみのひどさから困難を極め,長らく林内への追跡を諦めてきた。本研究では,テングザルにGPS内蔵の首輪を装着することで,今まで謎に包まれていた本種のマングローブ林での遊動様式を初めて明らかにすることに成功した。本研究の目的は,1)マングローブ林に生息するテングザルのより正確な遊動パタンを明らかにし,2)それを川辺林のデータと比較することで,マングローブ林の価値を再考することである。調査地は,マレーシア・サバ州のキナバタンガン下流域に広がるマングローブ林である。テングザルの雄1頭にGPS内蔵首輪を取り付け,2013年4月から2014年6月までの15カ月間その移動データを収集した。05:00から19:00の毎時一点の位置データを収集した(合計6,283点)。観察期間中のテングザルの遊動域は,113ha(50m×50mグリッド解析),74ha(95%カーネル),166ha(最外郭法)と推定され,一日の平均移動距離は860mであった。これは,過去に推定されていたマングローブ林における本種の遊動域(900ha)を大幅に下回る結果であった。また,グリッド解析により明らかとなっている,川辺林に生息するテングザルの遊動域(138ha)よりも狭い範囲を移動していることが明らかとなった。一方,テングザルはマングローブの森を一様に利用しているわけではなく,その遊動範囲の50%以上はマヤプシキ(ハマザクロ科)群落を利用していることが明らかとなった。